気がつけば、2015年も、あっという間に折り返し地点を過ぎていました。今年前半を振り返ると、株式会社マナブミュージックの設立等、様々に活動をしてきたのですが、演奏活動として最も印象に残っているのは、スイス、ニューヨークを拠点に活躍するジャズ・ピアニスト、クロード・ディアロとの共演です。私、鈴木学にとって大きな刺激になったと共に、音楽、ジャズの本質について、再確認する事ができました。
元々はジェシカ&クロード・スペシャル・セッションと銘打ち、これまたスイス人の若手女性トランペッター、ジェシカ・ガーリカーをフューチャーシたステージにする予定だったのですが、残念ながらジェシカが体調を崩してしまい、ステージに上がる事が出来ないという、大きなトラブルがありました。その為、リハーサル時に、演奏予定曲を大幅に変更し、クロード・ディアロのピアノプレイを前面に出したステージになるよう企てました。
その結果は大成功!お客様はクロードの美しいピアノを、その素晴らしい人柄と共に、存分にご堪能いただけたご様子でした。
クロードのピアノプレイ
以前から、優秀なピアニストであるとの噂は聞いていたのですが、実際に共演して、様々な点から大いに感心しました。
まず、伝統から革新まで、古今東西のジャズピアノスタイルに精通しています。実際のステージ上でも、曲によってはストライド(左手で伴奏のリズムを刻むスタイル)でソロピアノを披露したり、曲によっては前衛的なクラスター音を出していたり、実に多彩なプレイを披露していました。
しかし、そういった奏者は、現代NYには大勢います。クロードが素晴らしいのは、その上で独自性があるという点です。一言で言えば「ジャズである前に音楽」こう言えます。 彼は「ジャズっぽさ」にこだわりません。演奏中のその瞬間に閃いた音楽的アイデア、旋律の断片を音として紡いでいきます。それは時に、童謡のようなカワイらしい旋律であったり、キラキラした抽象的音列であったり、実に自由闊達です。
彼は純粋に音楽を楽しんでいました。時には音と戯れる童子のように見える瞬間すらありました。なんの衒いも無く、音楽と向かい合う姿勢には、大いに触発されました。
音楽、ジャズは世界共通語
体調の悪化の為、ジェシカが病院に向かっている間、英語が堪能な人間は、病院に付き添い、私を含めた英語音痴、男3人が、リハーサル現場に取り残されました。
言葉は通じない、しかし、何とかしてクロードとのステージを創り上げなければならない。思いっきり片言の英語により、彼のオリジナル曲を中心にし、ソロピアノ、ピアノトリオによる、フューチャーステージにしたい旨を伝え、楽曲のリハに取り掛かりました。 彼が弾くピアノのモチーフ、それから楽譜、そしてごくごく簡単な英語による説明・・。僅かなリハ時間でしたが、何とか、クロードの意図する音に近づけ、本番のステージに臨みました。
その結果は、大変面白い音楽になったと思います。クロードも終演後、この日の演奏を大いに楽しんだ、と話していました。お客様にも、それは伝わったと思います。
あらためて、音楽って、音による人間同士のコミュニケーションなんだと再確認できました。だって言葉より音のほうが、実際に通じ合えたのですから・・。終演後、私とクロードは、すっかり友達になっていました!本当にナイスガイです!
近い将来、クロードは名古屋を再び訪れてくれると思います。そして今回演奏ができなかった、ジェシカ(Tp)の為にも、チャンスがあれば、同様の企画をします。皆様、是非、お楽しみに!