合奏のレッスンをしていて、以前から疑問に感じていた点がありました。特に、吹奏楽経験者、学生ジャズビッグバンド経験者に多いのですが、楽曲の合奏中、編曲上、ものすごくわかりやすい箇所のはずなのに、発音の拍をミスしたり、お休みの小節数を間違える人の存在です。
それこそ、聞いていればわかるというレベルの話なのに、何故あんなにも、とんでもないミスになってしまうのか、以前から大きな謎だったのが、今日ついに解けました。
「周りの音を聞いて合わせる」指導の問題
おそらく、全体の9割以上の団体の、合奏中に繰り返されるであろう言葉「周りの音を聞いて合わせる」。この言葉が本当に危険なのは、以前から分かっていました。
周りの音より先に、まずは自分の音が聞こえていなければ、自分の音の状態が確認ができません。周りの音を聞いて理解したからと言って、自分の音が把握できていない状態で、何が改善できるのでしょうか?
楽器演奏の表現は、自らの奏でる音の、現状を把握できている事が基本です。つまり、まず、自分の音がしっかり聞こえているからこそ、その音をどのように表現しようかというアイデアが浮かぶのであり、周囲の奏者の演奏が、自らの演奏改善のヒントになるのです。
ですから、私、鈴木学は、合奏指導の際、いつも「自分の音をしっかり聞いて」と意識づけることからスタートするのです。「周りの音を・・」から「自分の音を・・」に、意識を変換するだけで、大抵のケースでは、バンド全体の音が力強く変化します。
「周りの音に合わせる」の勘違い
過去に「周りの音を聞いて合わせる」事に、異常なほど固執した合奏を経験した人ほど、かえって、発音のタイミングを間違えたり、今自分が楽曲中のどこにいるかわからなくなったりします。今回、その理由をついに発見しました。そして驚きました。想像すらしていない理由だったのです。
周りの音と発音のタイミングをそろえる事ばかりに意識が向いた結果、「周りの楽器の音をメトロノームと同様にとらえていた」せいで、数え間違えたりしてしまっていた、つまり周囲の奏者の演奏の、発音の瞬間しか、聞いていないことが判明したのです。
これがいかに異様な状態か?合奏というのは、複数の人間が同時に楽器を奏で、それを調和させて音楽を作り上げていくことです。もちろん、自分以外の奏者は、音楽を奏でています。音色、音程、といった音楽となる要素が様々に含まれているのですが、その中の「発音の瞬間」しか聞いていない、ということになります。それでは、他の要素はいったいどうなってしまうのでしょう?楽器の音色、音程は?表現は?・・
周りの「サウンド」を感じましょう!
この状態に思い当たる人は、まず、合奏中に周囲の楽器が奏でる「サウンド」を感じるように心がけましょう。この場合、「発音のタイミングがずれても構わない」とルール付けてください。何か特定の楽器というよりは、周囲の音全体を感じつつ、自分の楽器の音を奏でるのです。
サウンドの中には、他の楽器の音色、そして複数の音色による「和音(ハーモニー)」等々が含まれます。その中の特にどれとかではなく、まずは全体のサウンドを感じるのです。 その状態に慣れてきたら、特にジャズの場合、サウンドの中からベース音を若干強めに感じるようにしましょう。
普段、自分一人で練習するときにも、自分の音以外に、ベース奏者が共に演奏しているかのようにイメージしておくと、実際の合奏中に、ベース音を感じやすくなります。 この感覚に慣れてくれば、「演奏中に自分の音に集中する」事のみに集中していても、意外に周囲のサウンドも耳は聞いていてくれます。そして無意識の脳も反応します。そして何より、音楽の楽しさ、合奏の感動が感じられるようになってくるはずです。
皆さん、是非チェックしてください。合奏中、周囲の演奏を、音色、和音、音程を伴わない、メトロノームのように捉えてしまってはいないか?もしそうなっていたら、是非とも周囲のサウンド全体を感じるように意識を変えてください。これだけで音楽の世界の見え方が激変しますよ!