以前に、本サイト内のブログ『スィングキッズの衝撃』で、スイスの子供ジャズバンド、SWING KIDSを紹介しました。その後、たまたまそのブログをご覧いただいた、キッズの指導者、木元大さんから連絡をいただき、交流を続けたいた所、今回、私、鈴木学が指導する愛知県知多半島、武豊町の町民ビッグバンド、Swing Band TaketoyoとSWING KIDSとの競演が実現しました。2日間の交流で感じた事を、数回に分けて書きとめていこうと思います。
ウィーン少年少女合唱団のジャズ版
私にとって、今回の公演で何よりも印象的だったのは、キッズたちの美しい演奏です。音色、ハーモニー、そして一体感のあるアンサンブル、とにかく全てが『美しい』演奏でした。その美しさを一言で表現するならば、「ウィーン少年少女合唱団のジャズ版」といったところでしょう。何となくニュアンスが伝わりますかね?(笑)
キッズたちが奏でる音色は、とにかくナチュラルです。どこにもリキミが感じられません。そして、ジャズっぽいサウンドを出してやる、といったような気負いも感じられません。実際は、スィングジャズを題材として演奏しているのですが、ジャズとクラシックとか、ジャンルに関係の無い、ピュアな美しさを感じさせる音でした。
指導者の木元さんの話では、子供によっては5才(!)から、管楽器の練習を始めるそうです。実際今回の公演でも、5才から始めて、現在8才になる女の子が、バリバリとトロンボーンを吹いていました。楽器を手に立っている姿を見ると、身長と楽器の高さがあまり変わりません!!本当に驚きました!
楽器と戯れるキッズたち
ここで、皆さんに一つ思い出していただきたいことがあります。自ら、選んで音楽を聞くようになったのは、何才頃だったか覚えていますか?私の場合、おそらく小学校の高学年の頃くらいでしょうか。5才の頃に、意識して選んだ音楽を聞いていた人なんて、まずいないでしょう??
つまり、5才から管楽器をはじめるという事は、ほぼ何の先入観も、固定観念も無く、楽器と向き合う事を意味します。おそらく、楽器で音を出しながら、遊んでいるような感覚になるのではないでしょうか?何かキレイな音がするなあとか、旋律を吹いた時に完全に新鮮な心持で音と触れ合う・・、確かにこれなら、ピュアな音色を奏でる事になりそうです。 おそらく、キッズたちの演奏の『美しさ』の秘密は、『純粋さ』という事になりそうです。
しかし、そうはいっても、大人に近づくにつれて、誰でも大なり小なり純粋さを失い、『汚れて』いくのが当然に思えます。しかし、キッズの中には、17才の子も含まれています。どうして、そのような純粋な音を保つことができるのでしょうか?
木元さんとの出会い
SWING KIDSの指導者、木元大(Dai Kimoto)さんとは、昨年末辺りからずっとメールのやり取りをする中で、音楽、ジャズ、その他について意気投合していたのですが、今回初めて直接お会いすることができました。
2日間色々とお話を伺う中で、あらためて、その飾り気の無い、自然体そのものの人柄に感服すると共に、木元さんの音楽、ジャズに対する思想に深く共感しました。音楽指導に関する木元さんの考え方は、主に2つの柱から成り立っています。そして、この指導法こそが、キッズたちのピュアなサウンドの秘密です。
余裕を持って演奏できるレベルの楽曲を!
技術的な難易度の高い楽曲ばかり練習していると、どうしても楽譜に追われ、音符を演奏するだけで精一杯な状態になってしまいます。更に、管楽器の場合なら、演奏するのが難しい音域の音を無理に演奏していると、音色も窮屈になり、伸びやかな響きになりません。コレでは当然、演奏を楽しむ事は難しいでしょう。
技術的に余裕を持って取り組むことができる難易度の楽曲を、繰り返し繰り返し演奏していくことで、バンドのメンバー達はその楽曲を演奏する事に慣れていき、次第に演奏そのものを楽しむことが可能になります。更に、その楽曲の旋律のより深い部分にまで共感し、演奏表現を深めていく事もできます。
SWING KIDSの演奏を聞くと『美しさ』と共に、キッズたちの『楽しさ』が伝わってきます。スィングジャズの演奏を心から楽しんでいる様子、そして、その結果伸びやかな音色が響き渡る。本当に『音が喜んでいる』感じがするのです。(次回に続く)