私、鈴木学は音楽講師としてのサックス(サクソフォン)のレッスン、ジャズのレッスン、そして代表として音楽教室、鈴木サキソフォンスクールを日々運営している中で、常々忘れないようにしている「想い」があります。それは、生徒さんに「サックス、ジャズ、音楽の素晴らしさを伝える」事、そして、心の底から「音楽を楽しむ」ようになれるように生徒さんを導いていく事、その結果、楽器演奏の楽しさ、音楽の美しさに触れた人が増える事によって、「音楽のあるより良い社会」造りに僅かでも寄与したいという想いです。
「演奏を楽しむ」指導
そういった想いから、音楽の表現についての指導、特にジャズ・アンサンブルの指導の時には、バンドに様々な制約を与えるのでなく、演奏を不自由にする、好ましくない「思い込み」から解き放つべくアドバイスをします。「楽しく演奏するからこそ楽器が上達する」というポリシーを実現するには、こういった指導こそが好ましいと信じているからです。
しかし、ここ日本のジャズ教育では私と同じような指導法を用いる指導者が存在するのか、寡聞にして噂すら聞いたことはありません。そんな中、インターネットで(私にとって)衝撃的な記事を見つけました。「本場の米国も認めるジャズバンド「スウィング・キッズ」木元大は、子どもたちを連れて世界巡業!」インターネット記事なので、早々にリンク切れになる事もあるかと思いますので、記事の中からの引用を交えて、ご紹介します。【 ・・・以下、カッコ(『』)内は記事からの引用】
『ジャズと言えば本場はもちろん米国。だが毎年7月開催で盛り上がるフランスのアンティーブ・ジャズフェスティバルや スイスのモントルー・ジャズフェスティバルなど、ヨーロッパでもジャズの歴史は古い。(敬称略)ジャズの第二の故郷とまで称されるこの地に、「このバンドなしにジャズは語れない」と大絶賛される風変わりなプロのジャズバンド、スウィング・キッズがある。演奏者が、なんと小学生から高校生までの子供なのだ。しかも、その指導者が日本人というから注目度はさらに高まる。・・・』
指導者、木元大
まず、記事の冒頭、スウイング・キッズとその指導者木元大氏が紹介されています。 以下、記事ではスウィング・キッズが世界中で活躍している様子、指導者、指揮者の木元氏がその活動を広める為に奔走している様子を紹介していきます。 そして、このスィング・キッズの狙いが
『演奏していて楽しいこと』
であること、加えて
『普段の練習もそうだが、木元は子供たちをビシビシ鍛えることはしない』
こと、それについての木元氏の言葉として
『特に日本では、楽器の演奏で子供たちに技術的に難しいことを求めます。でも、僕のやり方は違う。易しい曲を何度も練習して、演奏者自身が楽しんで奏でられるようにするのです』
と続きます。 この発言は、日本の音楽教育の常識からすると、正反対の事を言っているように思えます。日本では十中八九、技術的に難しい課題を与え、「それがこなせるようになるまでとにかくがんばりなさい」と厳しく指導します。 しかし、 『演奏していて楽しいこと』 を求めて練習をした結果、スィング・キッズは木元氏自ら
『プロにも普通のレベルから一流までありますが、一番違うのは表現力です。スウィング・キッズは大抵のプロよりうまいですよ。本当です』 と言い切れるまでの演奏をしています。
音が喜んでいる演奏
ここでスウィング・キッズの演奏の動画をご紹介しましょう。「 Jam with Sam by Dai Kimoto & the Swing Kids 」です。
いかがでしょうか?子供達の演奏する音が喜んでいる感じがしませんか?もちろん、詳細に聞き込んでみるとやはり子供達の演奏、しかも大半のメンバーはプロになる事を目指しているわけではないので、技術的にハイレベルな演奏とは言えません。しかし、そんな事は全く意識させない「格好いい演奏」になっています。音楽、ジャズの演奏にはここが一番大切なのです!
そもそも、何故木元氏はヨーロッパでこのような活動をしているのか? 中学3年生で、一枚のジャズのレコードに出会った木元氏は、こんなに楽しそうに演奏できたら・・・と憧れを抱きました。しかし、次第に日本で演奏を続けることに限界を感じ始めます。
『日本ではジャズが今もって機械的な演奏になっています。だから、個性にも乏しい。あの当時も、プロでやっていても、きちんと演奏すべしということはよく言われました』
このように感じていた木元氏は、25歳の時
『もっと自由でいい、もっと楽しくなくては』
という想いからロンドンに渡り、ヨーロッパの一流楽団に加わり、
『音楽を楽しんでいる演奏、情熱が音にしみ込んでいる演奏』
を体験します。その体験を基に、定住した先、スイスで「スウイング・キッズ」の活動を始め現在の成功に至るのです。
日本にもSwing Kidsを!
木元氏は、日本で実現できなかった「想い」を、ヨーロッパに渡り実現しました。しかし、私は思うのです。この木元氏の活動と同様の事が日本でもできないのかと! 上記の記事の引用の中から、「何故スウィング・キッズはあのような楽しげで格好良い演奏ができて、他のバンドは出来ないのか?」と考えてみると、答えは実にシンプルです。「楽器の演奏、ジャズに対する考え方(哲学)の違い」これだけです!
確かに、ヨーロッパには音楽教育の伝統があり、楽器の演奏技術が上達しやすい土壌はあります。しかし、スウィング・キッズがそのヨーロッパの中でも唯一の特別なバンドとして絶賛されている、という事実から考えて、必ずしも演奏技術のみが問題なのではないという事がわかります。という事は、演奏を楽しむ事、全てをここから発想してバンドの練習を続けていけば、ここ日本でもスウィング・キッズのような演奏ができるバンドが出現する可能性はあるということなのです。
「格好良く、楽しい演奏ができるか?」という事と、楽器の演奏技術の高低の間に直接の関係はありません。 このブログをご覧になっている皆さん、演奏を楽しみましょう! サックスの音色を楽しみましょう! 演奏技術が「上手いか下手か」より、そちらの方がずっと大切です。だって、たとえ「下手」でも、格好いい演奏が楽しく出来たら、それでいいじゃないですか! 鈴木サキソフォンスクールは、そんな皆さんを全力でサポートします!