以前のブログ「タイミングとペースの違い」の中でお伝えした「ペースの安定」について、今回は、このペースの感覚をつかむためのメトロノームの使い方についてご説明します。これについては、鈴木サキソフォンスクールのサックス入門コースに在籍しているサックス初心者の方から、サックスアドバンスコースでジャズアドリブの練習に取り組んでいる方まで、全てのレベルの方の参考になるかと思います。
振り子式メトロノームを使いましょう!
テンポ感のトレーニングにメトロノームを用いる場合、昔ながらの振り子式メトロノームとデジタルの電子メトロノームの両方を用意することをお勧めします。特に振り子式のものは、針の左右への動きにより、音楽のペース感のイメージが視覚的に大変解りやすくなります。この場合メトロノームのクリック音については、ピッタリと自分の音と一致している必要はありません。 動いている針の先端をしっかりと目線で追いかけるようにして、その振り子の動きからペース感のイメージをつかむことが大切です。
さらに、これもブログの中でお伝えした「スピード感」についても、振り子式のメトロノームの針の先端の動きからそのイメージをつかむ事ができます。これは、皆さんにお試しいただきたいのですが、振り子式のメトロノームを使う際に、まず一度、目をつぶって針先を見ないようにして、何か暗譜しているメロディーの断片を演奏してみてください。そして次に、今度は同じメロディーをメトロノームの針先の動きをしっかり目で追いながら演奏してみてください。
いかがでしょうか?針先を見て演奏したほうがテンポ感が速いように感じられませんか? 実は、これがスピード感というもので、今の実験からわかる事は、大半の奏者が感じてるスピード感が遅いという事を意味します。針先を見て演奏した時に「速い」と感じられたスピード感が、本来演奏で求められるスピード感だと考えていただいてかまいません。普段から振り子式のメトロノームを練習に使用して、針先の動きを目で追う習慣をつけていただく事、これで演奏に必要なスピード感が身についてくるはずです。
電子メトロノームの使い方
次に、電子メトロノームはどんな時に使うと良いのでしょうか? 振り子のメトロノームでは示せない音、細かいビート(拍)を聞きながら練習したい時に用いると良いのです。
ジャズは基本的に3連符を感じながら演奏する必要があるのですが、その感覚をつかむために電子メトロノームで3連符を鳴らしながら練習するとか、3連符の中抜き、つまり3連符の三つの音の内、一つ目と三つ目のみ音を鳴らしたりして練習をする、といった使い方をすると大変効果があります。
また、ジャズのバウンスする(弾む)リズム以外の場合でも、あえて16分音符を鳴らしながら練習をする事で、効果的なリズムトレーニングとなる場合があります。是非お試しください。
自分の音に集中を!
最後にこれだけは絶対に憶えておいていただきたい事があります。振り子式にしろ、電子式にしろメトロノームを用いて練習する時、メトロノームの音よりも自分の楽器の音に集中して欲しい、 ということです。メトロノームを鳴らしていると、皆さんはどうしてもそちらの音を聞いてしまって、メトロノームの音のタイミングに合わせようとしてしまい ます。リズムをメトロノームに委ねてしまうという事です。しかし、メトロノームの本来の役割はペースメーカーのようなもので、あくまで奏者の演奏のテンポ感をチェックすることにあります。
リズム、テンポはあくまで奏者自身が演奏するメロディーの中にあります。テンポは自分が作るもの、その為に自分の音をしっかり聴く、そしてそのテンポのチェックのためにメトロノームを鳴らしておく、これが正しいメトロノームの使い方なのです。
特に音楽経験が少ない方は、自分のテンポが大丈夫か、不安になりがちです。そして、そういう方ほどメトロノームの音ばかり聞いて、クリック音のタイミングに合わせようとしてしまいます。そのようにしてしまうと、却ってリズムを取るのが難しくなってしまうので、結果的に自分はメトロノームが嫌いだ、難しい、と いう事になってしまいます。しかし、自分の演奏する音をしっかり集中して聞いていれば、その横で鳴っているメトロノームの音は何となく聞こえてきます。そ して、そのメトロノームの音が大体自分が予想しているタイミングで聞こえてくるように練習する・・・。このようにすれば、メトロノームと一緒に演奏するのは決して難しいことではありません。
サックス、フルート、クラリネット、そしてジャズ、ボサノバボーカルの練習に取り組んでいる皆さん、メトロノームを味方につけて、より良いテンポ感、スピード感を身につけましょう!