チューナーの正しい使い方

前回のブログ『チューナーは正しいのか?』で、実はチューナーで主に用いられる音律『平均律』では、サックスサクソフォン)、フルートクラリネット等管楽器がハーモニーを演奏する時に求められる音律『純正律』と誤差が出てしまうという指摘をしました。それならば、チューナーには使い道が無いのか?というと、決してそんな事はありません。特にサックス入門したての初心者の方には是非チューナーを有効に活用していただきたいのです。

 

しかし、皆さんが実際にチューナーを使用している様子を拝見すると、実に多くの方が、全く効果の出ない間違った使い方をしています。むしろこれではチューナーを使用する事が皆さんの演奏の上達を妨げる事になりかねません。

音程は目で見るものか?

前回のブログの冒頭のお話、「チューナーを目の前に置いて、まるで『にらめっこ』をしているかのようにチューナーの針、ストロボの動きを凝視しながら練習している・・」実はこれがチューナーの間違った使い方そのものです。 私、鈴木学はこのようなチューナーの使い方に大きな問題を感じるのは、まず根本的な問題として音程(ピッチ)を確認するのは目ではなく自分の耳であるべきだからです。

 

当たり前の事ですが、音の美しさは耳で味わうものですから、目で音程を確認しても「ピッチが合っているか、合っていないか?」のチェックにしかなりません。コレでは演奏を楽しむ事は不可能になってしまいます。

 

そもそも、実際のステージ、それから合奏の練習中にはチューナーは役に立ちません。合奏の中では8分音符、16分音符、のように短い音もたくさん演奏しますが、チューナーは短い時間では反応してくれません。

 

加えて、もしも長い音の最中にチューナーの目盛りを確認するのだとしたら、それは演奏しながら音程を変えていく、音程を合わせるまでの間ズレた音程を人に聞かせてしまう、というかなりビミョーな演奏をすることになってしまいます。それでも良いと思う方はまずいらっしゃらないでしょう。 実際のステージ、合奏では使えないのに、常にチューナーを見て個人練習をする、というのはどうなのでしょうか?

一日の初めはチューニング!

合奏チューニング

それならば、チューナーはどのように使うと良いものなのか?これは、初級中級関係なく全てのサックス愛好家の皆さんに、お勧めしたいのですが、その日初めてサックスのケースを開けて楽器を組み立て、マウスピースをネックに差し込みリードを装着した時に、チューナーで音程(ピッチ)を測る習慣をつけて欲しいのです。アルトサックスでもテナーサックスでも、楽器のシ(B)の音で測ると良いでしょう。そして、その値を見てマウスピースをネックに差す深さを決めてください

 

絶対音感を持っていない方でも、意外なほど、自分が常日頃どのくらいの高さの音程でサックスを演奏しているのか、耳に記憶が残っているものです。そして、その記憶に残っている音程で演奏しようと、無意識に楽器をコントロールします。

 

この時、普段よりもマウスピースが深めにセットされている、つまり楽器のピッチが高めにチューニングされていると、いつものピッチにしようとして、喉を開いてピッチを下げようとしてしまいます。反対に、マウスピースが浅めにセットされていると、ピッチを上げようとして噛む力を強くし、マウスピースを必要以上に締め付けてしまいます。

 

このようになると喉を開きすぎたり、強く噛んだ状態による悪影響を1日中ずっと引きずってしまいます。しかも、このような状態は自分では気づきません。今日は何か調子悪いな、と漠然と感じるくらいなのですが、それでも演奏中にイントネーションを合わせづらかったり、すぐに疲れてしまったり、様々な悪影響が出ます。

 

この状態を回避するには、日常マウスピースの差し込む深さをある程度安定させる必要があります。各自、正しいピッチを出す為の大体の位置を知っておく事が大切です。このために、毎日楽器を組み立ててすぐにチューナーを使ってチューニングする習慣をつけることが役立つ、ということです。 いつもマウスピースの差し込む深さを安定させて、自分の奏法を安定させる、チューナーはその為に大いに役立つはずです!!

ロングトーンの練習にチューナーを!

サックス(サクソフォン)等の管楽器の場合、初心者のうちは、自分の音程が正しいのか間違っているのか?よく分からないのは当然の事だと思います。先程指摘したとおり、細かい動きのメロディーに対してはチューナーはほとんど役に立ちませんが、初心者の練習課題の中心になるロングトーンの練習には、チューナーは極めて有効に活用できます。

 

サックス初心者の頃は誰でも安定したピッチで発音するのは難しいものです。音が震えたり、同じ音程をキープしているつもりが、徐々に下がってきてしまったり・・。サックスのような管楽器の音程は最終的に自分で造るものです。しかし、初心者の内は、自転車に初めて乗る人が補助輪をつけるような感覚で、チューナーをロングトーンの練習に活用してください。

 

【チューナーをロングトーンの練習に活用する場合、以下の2点にご注意ください】

  • チューナーの表示をずっと見続けているのは良くありません。時折チラッと見るのが良いのです。目で確認する事よりも、自分の音を集中して聞く事を優先させてください。
  • チューナーのメーターの動きが完全に静止しないことを気にしすぎるのは良くありません。こういった機械はロングトーンに対しては大変敏感に出来ているので、少々メーターがぶれるのは当たり前なんだ、と思っておいてください。