サックス(サクソフォン)、フルート、クラリネット等、管楽器の演奏の際、その出来栄えを左右する要素として、『音程』の良し悪しはとても重要なポイントです。例え、リズムがかなりフラフラしていても、音程(ピッチ)がバッチリと決まっていれば、それだけで良い演奏に聞こえる事すらあります。
ここまで、ブログ『最も厄介なもの『音程』①』『最も厄介なもの『音程』②』でサックスの演奏技術の面からの音程の合わせ方、それから、そのために重要なポイントである、身体の脱力について、ブログ 『リラックスしてサックスを吹くには?①』『リラックスしてサックスを吹くには?②』でお伝えしてきましたが、今回は、実際の演奏時の音程を整える為に、どのように意識して耳を使うと良いのか、特に、ソロ演奏をする場合の音程の整え方に焦点を絞って、解説していきます。
旋律的音程と和声的音程
一言で『音程』といっても、実際の演奏の中では2通りの意味合いがあります。まずは、合奏、アンサンブルの中で、複数の楽器によって和声音を奏でる場合の音程『和声的音程』、それから、合奏の中で単独の音の動き、ソロで演奏する場合の音程『旋律的音程』、この両者では、音程の意味合いが若干異なります。
一般的に、楽器演奏時の音程というと、前者『和声的音程』の事をイメージされる方が多いでしょう。コチラの場合は、自分の楽器から奏でられる音程と、他の奏者が奏でる音程との間の調和が問題となります。つまり、ある一音を発音している間の、他の楽器との音程関係ということです。
次に『旋律的音程』とはどういう意味なのか?おそらくコチラの考え方に関しては、皆さんにとって馴染みは薄いでしょうが、サックス等、管楽器でソロ演奏をする際にはとても重要な概念です。まずは、旋律(メロディー)の中の各音の音程について、ごくごく簡単にですが、その本質について考えてみましょう。
メロディーであるためには
例えば、サックス等の、単音で音楽を奏でる楽器を一人きりで演奏する時、ただ一音を吹き伸ばしただけではメロディーに聞こえません。2音3音4音、・・と音を連ねていく事で初めて、メロディーに聞こえる『可能性』が出てきます。
ここで『可能性』と書いたのには訳があります。何音か続けて奏でていっても、その音同士に、音程の関連が無ければ、メロディーには聞こえない、つまり単なる音の羅列にしかならないという事なのです。少なくとも、クラシックで言えば一部の無調、現代音楽、ジャズで言えば、フリージャズの一部を除いて、この原則は十中八九守られます。
それならば、音同士の関連とはどういうことかといえば、それはハ長調、ニ短調といった調性(キー)に則った音であるかどうかという事です。つまり、何音か連なっていく音列が、全て何れかの調性に則った音である事で、関連ある音同士に聞こえるという事なのですが、実際にはコレだけではまだ不十分です。
例えば、一つの調の音階に含まれる音を無作為に選び、順に並べていっただけでは、メロディーには聞こえません。一音目から二音目、三音目と順に音が奏でられていく時に、前後の音同士に音程のつながりが無ければ、メロディーに聞こえないのです。一音目から二音目へと音程のつながりがある音が続き、更に三音目になると、一、二音と連続した音程との、つながりのある音が続く・・、このように互いに音程の関連がある音列が続く事で、その音列がメロディーに聞こえます。
旋律的音程とは?
このような、メロディー内の各音の音程関係が『旋律的音程』です。一つ前の音に対して今の音の音程がどれくらいか?今の音に対して次の音の音程がどうか?というように音程を「整えて」いくのが『旋律的音程(イントネーション)』の考え方となります。
今、あえて音程を「合わせる」のではなく、「整える」という表現を用いました。ソロで演奏する場合、例えバンドの中であっても、一人だけ別の旋律を奏でる事になります。その旋律を演奏しているのは、ソロ奏者のみなのです。「合わせる」という場合、「何に」という事になりますが、ソロ演奏の場合、その「何に」が存在しません。あくまで、ソロ奏者は自分が演奏するメロディーラインの中の各音の音程(イントネーション)のバランスを、「自分で」整えていく必要があります。これが『旋律的音程』を整えていく際の大きなポイントです。
さて、ここまで書き進めてきた所ですでにかなりの長文となってしまいました。この『旋律的音程』を整えていく為の具体的方法について、回を改めて更に詳しくご説明したいと思います。【サックスでソロを吹く際の音程②】をお楽しみに!