ジャズアンサンブルを整える方法(音程編②)

【今回のブログは『ジャズアンサンブルを整える方法(音程編①)』の続編となります。是非、併せてご覧下さい。】

リード奏者の音程の整え方

音程、ピッチ

さて、ここからはもう少し具体的な考え方をご紹介していきます。まず、ハーモニーの中のリード音(主旋律)を演奏していく場合、ベース音に対して自分の音程をイメージするようにしましょう。

 

特にジャズバンドで合奏する場合、ピアノの音に音程を合わせると考える方も多いでしょうが、これは大変に無理があります。まず大抵の場合、ピアノのバッキングは和音で奏でます。複数の音を同時に弾くのです。いったい、この中のどの音を基準にしようというのでしょうか?瞬間的に判断する事は、絶対といっていいほど不可能です。それに対して、ベース音は常に単音です。主旋律も単音ですから、単音同士の比較で音程をイメージするのは、とても容易なことです。

 

更に言えば、キチンとジャズピアノを学習したピアノ奏者ならば、自分が奏でる和音が、リード音と被らない、ぶつからないように音を選んで演奏します。つまり、主旋律と同じ音は弾かない、若しくは目立たないような和音を弾くはずです。どちらにせよ、主旋律と同じ音が無いのであれば、複数の音で示されるピアノの和音よりも単音のベース音を基準とした方が圧倒的に分りやすいのです。

 

リード奏者は音程に関して、ベース音の奏者とデュエットで演奏しているような意識を持ちましょう。ジャズベースが4ビートのランニングで演奏している場合、必ずしも、ずっと和音のルート音(根音)を演奏しているわけではないのですが、それでも必ずといっていいほど、ベースラインの中でルート音は暗示されます。このルート音との間で音程を整えるようにイメージするのが、リード奏者の音程のポイントです。

サイド奏者の音程の整え方

ハーモニーの中で、リード音以外、主旋律を和声的に飾る音を演奏する場合のコツは、自分の音に加えてリード音、この2声を自ら発音しているようにイメージすることです。リード奏者とデュエットするつもりで演奏する、と言いかえても構いません。サイド奏者が『和声的音程』を整えるという事は、リード音と自分の奏でる音との間の音程関係を整える事を意味します。

 

これは決して「リード音を聞いて合わせる」という意味ではありません。これまでも再三指摘してきましたが、他の奏者の音程を聴く事で、自分の音程が整う事はありえません。あくまで、『自分の楽器からリード音と自分の音を一緒に発音する意識で演奏する』ということですから、むしろ自分の音に集中する必要があります。このような意識を持つと、主旋律に対する『和声的音程』が、ごくごく自然にイメージできるでしょう。

 

例えば実際に、①②③④⑤の5人の奏者で、旋律的に同時に動くハーモニーの練習をする際、①+②、①+③・・、というような二人ずつの組み合わせで、上記の意識を持ちながら練習した後、5人で再びアンサンブルすると、驚くほど和音が整い、美しい響きになる、つまり『和声的音程』がしっかりと整うはずです。

美しい『音程』を求めましょう

さてここまで、ブログ『サックス・ジャズ演奏法』のなかで、再三にわたり音程についてのご説明を繰り返してきました。私、鈴木学自身、音程こそが楽器演奏の美しさの決定的要因だと考えているからです。(ちなみに管楽器の場合、音程が美しく演奏できれば、十中八九『音色』も美しくなっています)今回で、音程についてのご説明は一旦完結しますが、過去に書いてきたブログについても、是非あらためてご覧いただければと思います。

楽器演奏に関しては、技術的な練習を繰り返す事ももちろん大切なのですが、それ以上に、音楽、楽器、サックス(サクソフォン)に対する適切な考え方を理解していることが本当に重要です。私のブログが、皆様にとって、こういった意味からも、少しでもお役立ていただければ幸いです。 皆さん、音楽、サックス、ジャズを楽しみましょう!