自分の音を見つけよう!①

サックスサクソフォン)、フルートクラリネットのレッスンに、長年取り組んでいると、日々新たな発見があります。つい最近も、楽器演奏上非常に重要なポイントに気づきました。

自分の音って?

ある程度経験を重ねた奏者であれば、演奏中必ず自ら奏でる楽器の音を、耳がずっととらえているものです。そして、自分の楽器から奏でられる「自分の音(音色)」をしっかりと認識しています。反対に経験の浅い未熟な奏者、もしくは思うように上達できないと悩んでいる人は、この「自分の音」という認識が無いことが分かったのです。

それでは、自分の音を認識できていない人は、どのように楽器を扱っているのでしょうか?それにはいくつかのパターンがあります。まず、そもそも演奏中、脳内に音楽が流れず、楽器の操作(次はどの指を動かして、ここで息を吸って・・)に関する情報で占められているパターン。次に、音楽は流れるけれども、サックス以外の音(ピアノ音という人が多いです)だったり、自分にとっての理想的なサックスの音色で、流れるパターンがあります。

このどちらの場合でも、演奏上支障があります。前者の場合は、そもそも音楽になりません。操作にのみ集中して楽器を奏でることは不可能です。後者の場合、そこそこは演奏できます。それでも、どことなく演奏、音色が「よそよそしい印象」になってしまい、聴衆に伝わりにくい演奏になりがちです。つまり、楽器演奏の最大の喜びとなるバンド演奏、人前での演奏の披露、どちらにも必須な「音によるコミュニケーション」を実現するためには、「自分の音」をしっかりと認識していることが必要なのです。

自分の音が嫌い

サックス(サクソフォン)

「鏡の前に立って自分の姿を見るのが大好き」、「自分の声を録音して聞くのが好き」なんて人は、滅多にいないですよね(笑)?これと同様に、自ら奏でる楽器の音色について、特に管楽器のように自分で音色を作る楽器については、「自分の音が大好き」という人はまずいません

 

それでも、自分の姿、声について好きでなくても、誰もが一応は受け入れています。しかし、自らの音色については、全く受け入れようとしない人が大勢いらっしゃるようです。その理由については大きく二つに分かれます。

一つ目は、楽器を正しく操作することに固執するあまり、「全く耳が働かず、そもそも音色が聞こえていない」事、もう一つは、姿、声同様「好きではないから受け入れたくない」事がその理由となっているようです。

とにかく正しく操作しなければ・・

「自分の音色が好きとか嫌いとか言う前に、まずは正しく演奏しなければならないでしょ?」、と考えてしまう人は多いようです。これについて、気持ちは理解できますが、まったくの無茶です。そもそも「正しい操作」なんてものは存在しません

楽器の演奏をする際、人間は実に微妙に楽器を調整しています。サックスの場合でも、一音隣の音であれば、発音の際の様々な力加減(喉、顎、唇、息)を調整し、わずかに加減する必要があります。そうしないと、音色のバランスが取れないのです。その調整を、「意識的に」正しく実行することが可能でしょうか?絶対に無理です!

実際には、演奏中に音色の変化等、常に注意深く聞き取るように習慣づけることで、体が微妙な調整を覚えてくれるのです。楽器の操作に関しては、身体のほとんどの部位が無意識に調整をしています。その「無意識」を育てるのが、楽器の練習です。そして「無意識」が働くためには、音色を聞かなければならないのです!

まずは、ミスを許すこと!

サックス(サクソフォン)
音を楽しみましょう!

「正しい操作」のみにこだわって練習したら、むしろ操作が身につきません。音を聞く、そして「自分の音」を認識することから、操作をマスターする事が可能となります

 

まずは、練習中の操作ミスを全て受け入れましょう!そもそも、楽器の個人練習は「間違えないようにするのではなく、より美しく表現することが目的」でしょう?誰だって人前での演奏、本番では間違えたくありません。しかし、練習の時にそれにこだわるのは、馬鹿げています。

間違えることは一切気にしないように、まずは、「自分の音(音色)って、どんな音なんだろう?」、これのみに集中して練習に取り組んでください。楽器演奏のマスターへの第一歩は「自分の音を発見すること」です。何となくでも構いません。「これが自分の音かな?」と思えてくれば、もうその時点で、簡単な楽曲は演奏できるようになっているはずです。