圧倒的な技術「マイケル・ブレッカー」

今回は、現代のジャズテナーサックス(サクソフォン)シーンに多大な影響を与え続けている、マイケル・ブレッカーのプレイをご紹介します。ジョンコルトレーンのプレイを土台に、ポップスからファンク、現代的なジャズ、フュージョンまで、なんでも吹きこなす多彩なプレイで、セッションマンとしても多数のレコーディングを残しています。

余裕が生み出すポップさ

ジャズテナーサックスの偉人、マイケル・ブレッカー

この方の素晴らしいところは、どんなに音楽的に高度で複雑なプレイをしても、どこかポップに聞こえるという点だと思います。

 

そう聞こえるためには、まず技術的にゆとりがある事が大切です。楽に吹き切っているように聞こえることで、リスナーが不必要に緊張する事が無くなります。

 

そして、和声的、旋律的に複雑なラインであっても、あくまでマイケル自身が「歌」として、自らの手中に完全に収めているからこそ、リスナーには分かりやすい、ポップな雰囲気のラインに聞こえるという側面も忘れてはいけません。

 

つまり、マイケル・ブレッカーは圧倒的に高度なテクニックと音楽性を有していたという事になります。だからこそポップスのレコーディングにも対応できていたのでしょうし、本当になんでも演奏できたのでしょう。そういう点においては、いまだに彼を超えるプレイヤーは出現していないように思えます。

現代ジャズシーンでは

もちろん、マイケルのような方向性が全てではありません。特に様々なスタイルが出尽くした感のある現代ジャズシーンの中であれば、各々プレイヤー自らが志向する演奏スタイルのジャズを目指せばよいのだと思います。

 

私、鈴木学自身、とてもマイケルのようにはプレイできません。・・というか、世界中のジャズテナーサックス奏者の中で、マイケルと同等のレベルの演奏ができる人は、ほんの一握りしか存在しないものと思われます。

 

ならば、皆がマイケルよりも劣っているのかといえば、必ずしもそんなことはありません。皆、それぞれのやり方でジャズを演奏すればよいのだし、実際そうなっています。高度なテクニックや複雑で難解な音を操る音楽力が高いことが、ジャズ演奏の全てではないのです。実際、レスター・ヤングとマイケルを比べて、優劣を論じることは無茶でしょう?

 

もちろんマイケルのプレイは、全てのジャズテナーサックス吹きにとって、大いに参考にすべきものです。研究、勉強材料、お手本として最高の例の一つでしょう。しかしながら彼のプレイが唯一の正解なんてことはありえません。改めて指摘するまでもなく、「自分なり」でよいのです!皆さん、自分なりのジャズ演奏を追い求めましょう!!