サックス(サクソフォン)等、器楽によるジャズ演奏の習得を目指す場合、自ら取り組む楽器と同じ楽器の奏者をお手本、参考にする事となります。例えば、ジャズアルトサックスの場合なら、チャーリーパーカー、キャノンボールアダレイ、アートペッパー、フィルウッズ、リーコニッツ等々。テナーサックスの場合ならば、レスターヤング、デクスターゴードン、ジョンコルトレーン、ソニーロリンズ、スタンゲッツあたりの著名プレイヤーの演奏を聞き込み、自らの演奏を確立していく糧とすることになります。
サッチモのプレイを耳コピー!
私、鈴木学自身、修業時代には数多くのジャズサックス音源(当時はまだLPレコードでした)を聞き込み、耳コピーに励みました。
そんなある日、何となく自分のプレイがマンネリに陥っていると感じるようになりました。何を演奏しても、アドリブ、即興演奏しても代り映えがしないように思えてきたのです。
そんな折、そういえばジャズ演奏に取り組む身でありながら、肝心の大本、ルイ・アームストロング(Tp)の演奏をあまり聞いていなかったことに気づきました。遅ればせながら、色々と聞く中、この演奏に完全にノックアウトされてしまいました。凄すぎます!
あまりの素晴らしさに感動し、すぐにテナーサックスでの耳コピーに挑戦しました。その当時既に、一般的なビバップサックスの耳コピーならば、さほど苦労しなくなっていたのですが、サッチモ(ルイのニックネーム)のプレイのコピーには随分と手こずりました。
サックスフレーズに偏らないように
何故、そんなにも手こずったのかと言えば、インターバル(音程間隔)が問題となりました。サックスの場合、運指が容易であることから、比較的近めのインターバル(2度とか3度)中心にプレイしがちとなります。スケール(音階)的な動きが多くなるのですね。
それに対して、トランペットの場合、比較的広いインターバル(3~5度あたりの音程間隔)を吹き分けたほうが、運指的に容易になりやすい上、ダイナミックにも聞かせやすくなります。その為、サックスと比べると全体的なフレージングのインターバルの傾向が変化します。
サッチモは典型的な、インターバルが広いタイプのプレイヤーであるため、近いインターバル中心のサックスフレージングに慣らされていた私は、耳コピーに手こずったのですね。
しかし、苦労してサッチモのコピーに取り組んだ後に、はっきりと自覚できるほど、自身のプレイが変化しました。インターバルの幅が広がったおかげで、フレージングの自由度が飛躍的に広がったのです。
サックスでジャズ演奏に取り組んでいる皆さん、ジャズトランペットのプレイを耳コピーして自らの物としてください。サッチモ以外にも例えば、ディジー・ガレスピー、チェット・ベイカーのプレイなんかも参考になると思います。以下に、両者の演奏例を挙げておきます。是非、色々と聞いてみてくださいね!