数日前に、昨今巷を騒がせている「JASRAC(ジャスラック)VS 大手音楽教室」について、私、鈴木学が書いたブログ記事「音楽教育と著作権について考える」をご紹介したところ、思いのほか多くの皆様から反響をいただきました。シェアいただいた皆様、ありがとうございました。
日経新聞掲載の両者のインタビュー
その後、日経新聞電子版にて、JARACそしてYAMAHA、各々の言い分を述べたインタビュー記事を見つけましたのでご紹介します。
JASRAC側「音楽教室から著作権料 JASRAC理事長、批判に答える 」
YAMAHA側「ヤマハなど音楽教室、JASRACに反論『法を拡大解釈』」
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JASRACの記事は突っ込みどころ満載!
JASRAC側について、まず一点、絶対に見過ごせない、「世迷言」としか思えない発言がありました。「音楽大学、専門学校からは著作権料を徴収しないという」話の流れの中で、「中小音楽教室は『学校法人』になればよい(著作権料は徴収しない)」という趣旨の発言をしています。
バカも休み休み言うべきでしょう!この方は、学校法人になるための資格、手続等少しでも調べた上で、このような発言をしているのか?例えば、学校法人になる前提として「自前の土地、建物を所有すべし」とあるのを知った上での発言なのでしょうか?文部科学省のサイトを閲覧すれば、他にもいくつか条件があるとの記載が、すぐに見つかります。日本上の音楽教室の中でこれらの条件を満たす例が、何%あるでしょうか?思わず「なれるもんなら、とっくになっとるわっ!」と、突っ込んでしまいました(笑)
こんな浮世離れした感覚の人物が理事長を務めているのかと、驚いてしまいました。経歴を拝見すると「生粋のJASRAC」とのこと、思わず納得してしまいました。頼むから少しだけでもよいので、現実の世の中を見ていただきたいです。
他にも、何故ダンスホールと、音楽教室のレッスンが同一視されるのかという、常識的にはまず理解しがたい部分について、何故「すでに結論が出ています。争うことは何もありません」と断言できるのか?など、突っ込みどころは満載のように思えます。
ワンレッスンで¥50?
このブログを書いている間に、別のJASRAC理事のインタビュー記事も上がっていました。
このお方の発言についても、大いに問題を感じます。特に以下の部分です。
今提案している使用料は、最大で1レッスンあたり50円です。この程度の金額は何がなんでも受講料に転嫁するものとは思えません。「JASRACに使用料を払うことになったが、うちは受講料に転嫁しません」という風に企業努力で吸収できるレベルではないでしょうか。
JASRACが提案している著作権料は「売り上げの2.5%」です。ということは、1レッスンあたり¥2,000という料金を想定して仰っているようですが、これは、30分のレッスン?それとも1時間でしょうか?マンツーマンの個人レッスンでしょうか?それともグループレッスン?レッスンの形態、システムによってレッスン料は大きく変動します。にもかかわらず「最大で1レッスンあたり50円」と発言する根拠が、大いに気になります。
それはともかくとしても、仮に一般的なレッスン形態、1レッスン30分の個人レッスンのことを指しているとしましょう。だとすると、このレッスン料の内訳がどうなっているのか、この方は想像がついているのでしょうか?大いに疑問に感じます。
講師の謝礼、教室管理者の人件費、施設維持費、光熱費・・、ほんの少々具体的に想像してみるだけで、意外に¥50は大きな価値を持つことが理解できるはずです。
そもそも、このお方は消費税率が5%から8%に引き上げられた際に、日本中がどれだけ景気減速したか記憶にないのでしょうか?それとも著作権法に関係ないから、興味が無かったのでしょうか?少なくとも、その当時の記憶(と言ってもそれほど昔ではありませんが)が残っていれば、軽々しくこのようには発言できないはずです。
組織よりもトップの人間の問題では?
ここまで、JASRACの上層部の方のインタビューの内容について、問題点を指摘しました。ここで一端、一般論と前回のブログの内容を踏まえつつ、「JASRAC(ジャスラック)VS 大手音楽教室」の争点、問題点を整理しますと、まず前提として・・
- 著作権はとても大切なもので、著作権料は著作権者に還元されるべき(ちなみにJASRACはあくまで著作権料を徴収、分配する団体であり、著作権を守る団体ではありません・・)
- JASRACの存在、活動そのものは、そのために必要
しかしながら・・
- 音楽教室内のお手本演奏が、著作権徴収の対象となりうるのか?
- JASRACが徴収しようとしている著作権料2.5%(利益に対してではなく『売り上げ全体の2.5%』)は高額すぎないか?他の業界と比べて、そして音楽教室の経営実態、講師の報酬に対して適切な金額と言えるのか?
前者に関しては法的な疑問がある上に、他にも問題があるにもかかわらず、JASRAC側が今回の件を強行しようとしている、それを指揮しているのは上記のような問題発言をする人物らである、ということはつまり・・。
「JASRAC=悪」なのではなく、「現在のJASRACを率いる上層部に問題人物がいる!」と結論付けるののが適当でしょう!この点を間違えないようにしたいです!!この10年間、頻繁にJASRAC対様々な業界の争いが生じている事からも、それは明らかなように思えます。
がんばれYAMAHA!
冒頭に紹介したYAMAHA側の主張について、たいていの人にとって感覚的にも腑に落ちやすい、少なくとも「法律論」に因らなければ、常識的な内容と思えるでしょう。もしも、JASRAC側が引かないのであれば、法廷で戦ってほしいです!JASRAC上層部とです!
個人的には、その結果として、ごくごく少額の著作権料を納めるという形で決着をつけていただくのがよろしいかと思います。例えば年間売り上げの0.1%とか・・。そうすれば今後、それ以上要求されることはありませんよね!
しかもそのレベルの金額ならば、JASRACにとっては、事務手数料と天秤にかけて、著作権者に還元すると赤字になるでしょうから、それ以上、例えば、音楽大学、専門学校にまで手を伸ばされる事態を回避できるように思えます。
がんばれ大手音楽教室!個人的に応援をつづけたいと思います。賛同いただけるかたがいらっしゃれば、是非、応援をよろしくお願いします!!