ジャズバリトンサックスの世界①

ジャズバリトンサックス(サクソフォン)

ジャズサックス名鑑」、久々の更新となります。今回から2回に分けて、ジャズバリトンサックスサクソフォン)の名手たちをご紹介します。1回目は、バリトンのダンディーな音色を活かした、ムーディーなプレイを得意とする名手達を・・。バリトンはカッコいいですよ!

バリトンサックスの王者、ハリー・カーネイ

まずは、ジャズバリトンサックスを語る上で絶対に外せない、誰もがお手本として憧れた、デューク・エリントン楽団の至宝、ハリー・カーネイをご紹介します。彼のプレイの特徴は、もう何と言っても唯一無二の音色でしょう!ハスキーでありながら艶、深みのある音色は、何度聞いてもうっとりさせられます。まずはエリントンの映像からこちらを・・。一曲目「Sophisticated Lady」は彼の持ち曲(?)で、循環呼吸のエンディングがエリントン楽団の名物の一つとなっていました。

ハリーの場合、エリントンを離れて個人名義で吹き込んだ音源は非常に少ないのですが(ほとんどのキャリアをエリントンと共に過ごしました)、ストリングスを伴ったこの音源は、ハリーのダンディーなバラードプレイの魅力を表現した好録音かと思います。

名アレンジャー、ジェリー・マリガン

ジャズ史上では、バリトンサックス奏者として名高いジェリーマリガンですが、私、鈴木学は個人的に、作編曲家としての能力の方を高く評価しています。もちろんバリトンサックス奏者としても、テナーサックスで言うところのスタンゲッツ系の上質なプレイを聞かせてくれます。それでも彼の生み出す音楽を聴くと、音楽力自体が突出しているのが目立ちます。まずはジェリー自ら作曲した作品の演奏から・・。

本当はジェリーがビッグバンドを率いた音源をご紹介したいところなのですが、適切なものが見つからなかったので、少々アンサンブルが聴けるこの演奏をご紹介します。後半部分に、彼の豊かな音楽的センスを感じさせる、美しいハーモニーが聴けますが、何よりショパンの作品をジャズ(正確にはボサノバリズム)化した、そのセンスに脱帽します。

北欧ジャズの先駆者、ラーシュ・グリン

私にとって、初めてのヨーロピアンジャズ体験は、このラーシュ・グリンでした。正直なところ、「あまりジャズっぽくなくて、つまらないのでは?」なんて、聞く前にはあまり期待していなかったのですが、これが聞いてビックリ!スケール感豊かで高い音楽性を示したプレイに、一発でノックアウトされました!さすが西洋音楽の本場、ヨーロッパの奏者だけあって、演奏能力が非常に高く、音楽性の深みも感じられます。

今現在、ジャズ演奏家としての私は「ジャズである前に音楽」、つまり「ジャズも西洋音楽の流れを汲んでいる音楽の一種なのだから、まずは西洋音楽として美しいものを」と考えているのですが、そう思うようになった理由の一つが、ラーシュ・グリン体験だったように思えます。そんなラーシュの凄みの一端が感じられる映像を、ご紹介します。

如何でしたか?もう理屈抜きにカッコいいですよね?「スケール感の豊かさ」というのも、バリトンサックスの大きな魅力なのですが、彼のプレイからはそれが大いに感じられます。素晴らしいです!

今回はバリトンサックスの「メローな魅力」に焦点を当ててご紹介しましたので、次回は、バリトンサックスの野性味(?)を表現した、ゴリゴリ系(?)の奏者をご紹介しようと考えています。次回もお楽しみに!