昨夜は、鈴木サキソフォンスクール代表、鈴木学が音楽監督を務める、愛知県知多半島、武豊町の町民ジャズビッグバンド Swing Band TAKETOYOの指導に赴いていました。年に2回の定期演奏会を間近に控え、本番前最後の合奏練習という事で、熱が入った練習となりました。
町民ビッグバンドとして
このバントとのお付き合いは、もうかれこれ7年以上になります。その間、初期は毎月3回、今は毎月2回の練習に音楽監督として参加し、音作りに深くかかわってきました。
もちろん、教室内での個人レッスンであれば、もう10年以上のお付き合いになる生徒さんは、大勢いらっしゃいます。しかし、バンド単位で、しかも毎月数回ずつと言う頻度で、長年指導を続けるチャンスは、通常滅多にありません。バンド指導と言えば、だいたいコンサート前に1回、もしくは数回、集中的に指導する例が大半です。
7年間継続してとは言うものの、その間、メンバーの入れ替わりも多々あったりして、音楽的に大きく成長した時期もあれば、停滞した時期もありました。それでも全体的には、メンバーの努力の結果、徐々に徐々に演奏のレベルが高まってきました。
演奏のレベルと書きましたが、それはあくまでアマチュア(愛好家)バンド、町民バンドの範疇でという事です。下は中高生、上は還暦を過ぎの、大変に幅広い年齢層のメンバーが、皆で楽しくビッグバンドジャズ演奏に取り組む・・、楽器演奏の愛好家が集うバンドとして、徐々に演奏レベルが高まってきたのです。特に、皆で合奏している際のサウンドについては、リスナーが鑑賞用音楽として聴いても、マアマア楽しめるレベルになってきていました。
ついに音色に自己表現が・・!
とは言うものの、各人のソロ演奏に関しては、かなり挙動不審・・、というのが最近までのこのバンドの評価でした。しかし、つい先月ほどから、メンバーのソロ演奏が変化してきました。各ソロイストが表現したいものが、楽器を通じて伝わってくるようになったのです。
以前は、楽譜に書いてある音を並べるだけで精一杯な雰囲気でした。そのせいで、観客には今一つソロの内容が伝わらない、「頑張っているのは分かるけど・・」みたいな雰囲気のソロ演奏だったのです。少なくとも、演奏している本人も、自分が具体的にどんな音色を発しているのか、把握できていなかったように察します。
しかし今は違います。各ソロイストがしっかりと自分の楽器から奏でられる音色をコントロールしようとしているのが伝わります。きちんと自分の意志で、イメージで楽器を操っているのです!これはアマチュアとしては、大変に素晴らしい事です。一般的なアマチュアジャズバンドの演奏を聴く機会があると、しっかりと運指練習をして、技術レベルの高い楽曲を演奏する、所謂「上手い」演奏に出会うことは多々あります。しかし、きちんと音楽している、つまり音色を通じて自己表現できている演奏を聴くことは滅多にありません。
複雑な音列を、ただ一生懸命、楽譜の指示通りに正確に並べた「音」を聴くと、「頑張っていますね」と感心することはあっても、音楽として感動することはまずありません。それに対して、例えシンプルな音列、旋律であっても、きちんと演奏者の意思が通った「音色」で奏でられた演奏を聴くと、一音一音をしっかり鑑賞しようという気持ちになります。そして、その演奏を聴いたリスナーの感想は、「良い演奏だったね」になるのですね。
生徒から教えられる!
リスナーに対して、どういう演奏が鑑賞用の音楽として伝わるのか?それには「演奏者の感覚が、音色に反映された演奏」であることが必須であると、以前より持論として信じていました。とは言え、それを現実に確認できる機会はそれほどありません。自分の演奏からはともかく、生徒さんの演奏からそれを実感できる機会は数少ないのです。
しかし、 Swing Band TAKETOYOとの、7年間を超えるお付き合いの中で、それを実感させてくれるメンバーが増えてました。これはとてもありがたいことです。長年かけて、一生懸命に伝えてきた内容に対して生徒が結果で答えてくれ、素晴らしい演奏を聞かせてくれる・・。これは音楽教師としては、もう最高のご褒美です!
私はもちろん、この7年間、自分の持っている知識、経験、アイデアをフル動員して、このバンドを指導してきました。その結果、バンドのサウンドに少なからず貢献できたのではという、少々の自負はあります(ただ、一番頑張ったのはメンバーだという事実も、しっかりと理解しています)。
しかしながら、私がバンドに対して提供してきたものと同等、もしくはそれ以上にメンバーから色々といただいたと、強く感じています。提供したノウハウに対して、良い演奏で答えてくれる生徒は、音楽講師にとって最も大切な財産なのです。それこそが自身の指導ノウハウ、スキルの根拠となり、さらに言えば講師としての自信につながります。
そもそも、一つのバンドと定期的に長いお付き合いができることは、音楽講師として実に幸せなことです。恵まれた環境に感謝しつつ、私自身の持っているものを一切の出し惜しみをせず、お伝えしていきます。 Swing Band TAKETOYOの皆さん、これからも頑張っていきましょうね!