音楽のリズムに関して「縦のり、横のり」という言葉があります。ネットで調べてみたところ、この言葉の正確な定義は定まっていないか、もしくは定義が存在していたとしても、一般に広まっていない状態のようです。ほとんどの人が、語感の雰囲気、印象をもとに、あいまいな意味でこの言葉を用いています。
しかしながら、特にジャズのリズムを説明するのに、この「縦ノリ、横ノリ」という言葉の語感が便利なので、ここでは私、鈴木学なりに定義付けした上で、ジャズのリズムの解説に用いてみようと思います。そしてこのブログ内のカテゴリー「ジャズ・サックス演奏法」の初期に書き認めた、ジャズのリズムに関する記事を改めて紹介しようと思います。
縦ノリ⇒発音のタイミングを揃える
リズムにおける「縦」を各楽器の発音のタイミングのことと仮定します。そうなると、リズムの縦を基準にアンサンブルを整えようというのが「縦ノリ」のアンサンブルとなります。例えば、一般的な中高吹奏楽部のように、指揮者が振る指揮棒の打点を基準に、各楽器の発音のタイミングを揃えようとする合奏、一部ロックバンドのようにドラムの音、打楽器の音をクリック音代わりにして発音のタイミングを揃えていく合奏、他にもメトロノームの打点と発音を揃えようとする練習も「縦ノリ」の範疇に入るでしょう。
タイトルに記した通り、ジャズ演奏の際には縦ノリではなく、「横ノリ」でリズムを表現していきます。例えば、よくある質問で「ジャズっぽく演奏できない」と訊かれますが、大抵の人はその原因が「黒人奏者的表現ができていないせい」と考えていますが、実際は、リズム表現が横ノリになっていないことが原因であることがほとんどです。
ジャズ演奏における「横ノリ」とは?
先ほど、縦ノリとは、発音のタイミングを揃えていくアンサンブルと定義しました。それに対して横ノリというのは、各奏者が演奏しているテンポ感、ペースを揃えていくアンサンブルのことを言います。発音のタイミングを他の奏者と併せることよりも、自分が奏でている旋律のリズムの流れを整えていき、それを他の奏者と共有するのが横ノリのアンサンブルです。
一般的な縦ノリアンサンブルでは、「周りの音を聴いて合わせるように」と指導されることが大半でしょう。学校教育でも「聴いて合わせる」と指導されることがほとんどでしょうから、一般的な日本人はアンサンブルとは「周りの音を聴いて合わせる」こと、つまり「縦ノリ」で合奏するのが当然だと思い込んでいます。残念ながら、日本人にとってジャズ演奏が難しくなってしまうのは、これが根本的な原因です。ジャズは横ノリの音楽なのです。
他の楽器とのリズムの揃え方は?
横ノリのアンサンブルでは、各奏者は自分の音を聴く事に集中し、各々音楽のリズムの流れ、旋律を整えていきます。その場合の各奏者の間のリズム的な関係はどのようになるのか?そこには即興の音楽ジャズならではのアンサンブルの考え方が存在します。お互いの音を溶け合わせるのではなく、それぞれの演奏した音を互いに聴かせあいたい、聴きたいのです。
かなりの長文、そして内容が複雑になってきたので、今回のブログはここまでにしたいと思います。ジャズの横ノリの概念を解説しました。できるだけ、リンクしたブログ記事までご覧いただけると、横ノリに対する理解が深まることと思いますので、是非ご覧ください。そして次回のブログでは実践編として、練習方法、そして横ノリをマスターする上で最大のポイント「拍子(ビート)」について解説します。お楽しみに!