サックスの音色について考える!

サックス(サクソフォン)

最近、鈴木サキソフォンスクールのレッスン室で、生徒さんのサックスサクソフォン)演奏を聴いていた際、ふと気になった点がありました。「今演奏しているメロディー、旋律に対して、あなたの音色はフィットしていますか?」と尋ねたところ、「いえ、それは全く考えに無かったです」とのこと、気になったので他の生徒さんにも同様に尋ねたのですが、やはり同じような返事ばかりでした。

「正しい音色」?

さらに深くお話を伺うと、「絶対的に『正しい音色』というものが存在していて、それに近づくように、とばかり考えていました。そして、その音色が手に入れば、あらゆるメロディーをその音色のままで演奏できると信じていました」とのこと。まず簡単に指摘しますが、音楽に「絶対」はありません。もちろん「正解」もありません。「正しい音色」なんて概念は、楽器演奏には全く持ってふさわしくないのです。

改めて確認しておきますが、サックス(サクソフォン)、フルート、クラリネットと言った木管楽器はもちろん、トランペット、トロンボーンといった金管楽器、ヴァイオリンのような弦楽器、どんな楽器でもある程度の幅で、音色のコントロールは可能です。むしろ、音色をコントロールしながら演奏する事こそが、楽器演奏の醍醐味です。基本的には楽器内で音色を生成する鍵盤楽器ですら、タッチその他の調整で、音色の雰囲気を変えることができます。

楽器演奏に取り組むという事は、自分なりの音色の獲得を求めるという事とほぼ同義です。そしてそれは、果てしの無い道のりでもあります。楽器演奏を続けている限り、完全に自分の音色に満足することは、まずありえません。そもそも、「美しさ」の探求にゴールは無い、「絶対的な正解の音色」なんて存在しないのです。「自分なり」の美しさを求める旅は、楽器演奏を続けている間ずっと続きます

楽曲にフィットした音色を!

一言に「美しい」と言っても、その「美しさ」には様々のタイプがあるはずです。例えば、女性アイドルにだって、イケメン俳優にだって、様々なタイプの人がいるでしょう?実は「美しさ」というのは、実にあいまいな観念なのです。そして「美しい」と感じる感覚は、完全に「その人なり」、パーソナルなものでしかありえません。

楽器の練習中、そもそも「美しい音色って何だろう?」なんて悩みだしたら、訳が分からなくなってしまいます。そんな時に大いに有効なのが、冒頭の問い「今演奏しているメロディー、旋律に対して、あなたの音色はフィットしていますか?」という考え方です。絶対的に美しい音色なんて分かりっこない、だからこそまずは、「自分なりの音色」の中から、今奏でているメロディーに適した音色を求めるのです。

例えば、グレンミラー楽団のレパートリーを演奏する際、ムーディーな「ムーンライト・セレナーデ」と、スウィンギーな「イン・ザ・ムード」の両者を同じ音色で演奏したとしたら?かなり違和感があるでしょう!・・そのように想像すれば、曲想によって音色を変化させたくなるはずです。

私、鈴木学自身、最近のライブ出演では、主に自作曲を演奏していますから、曲ごとに音色その他の雰囲気を変化させることは強く意識しています。だって曲ごとに、作曲した際の思い入れは異なるのです。当然のように曲ごとにそれを表現して、リスナーに伝えたいと願います。全曲、同じような音色、雰囲気で演奏してしまったら、せっかく作った楽曲たちが可哀そうすぎます。

皆さん是非、曲にフィットした音色を求めてください。それを探りながら演奏してください。そうしているうちに、楽曲そのものが、「そうそう、そんな音色で演奏してね」と、私たちに音色を伝えてくれます。勘違いが無いように繰り返しますが、もちろんそれは「絶対的に良い音色」ではありません。あくまでその人なりの音色の中から、曲にフィットした音色を探し求めるのです。これが習慣になれば、必ず皆さんの音色の世界が深まります。ぜひ実践してくださいね!